Introdustion
―商いの国 第16番街 “夕焼けの街”―
「やぁ、いらっしゃい」
来客を告げるベルがカランコロンと鳴り、店主のファゴット・カルマンドは珈琲を片手にカウンターから声をかける。
「噂には聞いていたけど中々良い店ね、そこの子なんてフルフル震えて随分と可愛らしいこと」
宵闇のような黒い鍔広帽を被る貴婦人のように立ち振る舞う女は憑喪達を横目に口を開く。
「ちょっと引き取ってもらいたいモノがあるのだけどいいかしら?」
そう言って女は人形を店主へと差し出す。
「ほう…まるで呪いだね」
差し出された人形は艶やかに光りを照り返す陶器人形だった。
二人の少年が“今生の別れを拒むように強く抱きしめ合っている”姿はまるで誰かに触れられる事を拒んでいるように見える。
「流石ね。でも安心して頂戴、それは決して他者に向くモノではないかラ」
女は見繕った椅子に腰を掛け続ける。
「それは永い旅路の果て何の手違いか私の所に来てしまったの、私そういうのシュミじゃないけど棄てるのは少し可哀想でしょうし貴方の店なら任せられると思ってね」
「では、色々聞かせてもらえるかな?この子達の軌跡を」
「えぇ喜んで。ヒトと話すのは久しぶり」